8日の東京外国為替市場で円相場は3日続伸した。17時時点では前日の同時点に比べ21銭の円高・ドル安の1㌦=83円68~71銭近辺で推移している。昼過ぎに一時83円34銭近辺と、前日の海外市場で付けた高値(83円51銭)を上回り、1995年5月31日以来の高値水準となった。欧州の金融機関の 財務不安が再浮上したことを背景に円が対
ユーロで買われ、対ドルでも円買いが優勢だった。円買い一巡後は持ち高調整目的の円売り・ドル買いが出て、円は伸び悩んだ。野田佳彦財務相は午前の衆院財務金融委員会で、為替介入の可能性について「必要な時には断固たる措置をとる」と述べた。「これまでと比べ介入について踏み込んだ発言ではない」との見方から円相場への影響は限定的だった。9~17時の円の安値は83円87銭近辺で、値幅は53銭程度だった。円は対ユーロで大幅続伸した。17時時点では同1円12銭の円高・ユーロ安の1ユーロ=106円19~22銭近辺で推移している。欧州の金 融機関への不安再燃を背景にユーロが売られた。加えてアジアの主要な株式相場が下落したため、投資家がリスク回避姿勢を強めるとの見方が広がり、低金利の 円は強含んだ。円は一時105円80銭近辺まで上昇し、8月25日以来約2週間ぶりの105円台を付けた。ユーロは対ドルで大幅続落した。17時時点は同0.0103ドルのユーロ安・ドル高の1ユーロ=1.2689~92ドル近辺で推移している。
変わるアニメ業界──「面白ければ売れる」なら簡単 文● まつもとあつし アニメの収益構造は激変 動画協会の別の資料を見てみよう。マッドハウスの代表取締役を務め、『アニメビジネスがわかる』の著者でもある増田弘道氏のワーキンググループがまとめたデータだ。 ジャパニメーションはコンテンツの優良児?「クールジャパン」「ジャパニメーション」という言葉を耳にするようになって久しい。海外の動画配信サイトでは、違法・合法を問わず数多くのアニメが投稿され、視聴されている。YouTubeでは日本人よりも、海外ユーザーのほうが活発にコメントでやりとりをしている光景に出くわすこともある。
アニメーションはコンテンツの優良児とされ、その海外展開は国から支援を受けるなど政策とも連動している。(賛否両論あったが)文化庁が設立を計画していた国立メディア芸術総合センター「アニメの殿堂」も記憶に新しい。現在では予算執行が停止しているものの、当時は海外旅行者の利用も見込んでいた。言語や文化的背景など、コンテンツの輸出にはさまざまな障壁がある。そんな中、アニメは「輸出」が期待できる優良産業のひとつに数えられてきたわけだ。海外市場の落ち込みが顕著 ここで日本動画協会(アニメ関連企業の業界団体・一般社団法人)が公開している調査資料をみてみよう。「日本のアニメ業界・アニメ市場の近年の動向」と題された2009年の資料では、アニメ視聴(ライセンス販売)の全世界への拡がりを謳っているが、注目したいのはそのなかの「海外販売売上推移」だ。
この数字は、国内の制作タイトル数の動向とも連動しており、新作タイトルが減ったから海外売上が減少したとも考えられるが、いずれにしても2006年をピークに落ち込みが激しい。喧伝されるクールジャパンといったキャッチコピーや、動画投稿サイトにおけるファンの熱狂ぶりとは異なる姿が垣間見える。同時に国内のアニメ業界からは、いわゆるフル3Dアニメの影響を懸念する声も聞こえてくる。手書きの原画を元に動画のテクニックを駆使して、動きだけでなくキャラクターの心情まで豊かに表現する、いわば職人技を伝承してきた日本アニメ。しかし海外では、3DCGだけで制作されたアニメ作品が大半を占めている。そういった作品に親しんだ世代が大きくなったときに、日本の伝統的なアニメーションが果たして今のような支持を得られるのだろうか、というわけだ。 しかしアニメを作るにはお金がかかる。PixerやDreamWorksが手がけるような大型劇場作品は別として、テレビ向けの作品であれば一度キャラクターや舞台を3Dで作ってしまえば、繰り返しそれを利用することで制作費を大幅に抑えることができる。一方で多くのスタッフが関わる日本のアニメ制作には、多大なお金が掛かる。作品によってばらつきがあるが、一説によると1話(約25分)あたり1000万円から2000万円の制作費が必要ともいう。これを毎週1回、1クール(3ヵ月間:12~13週)続ければ、約2億円。 これだけの費用を1社で捻出するのはなかなか困難だ。そこで編み出されたのが「製作委員会方式」である。アニメ作品をさまざまな形で商品化してビジネスを展開したいと考える複数の企業が、出資金を出し合い、制作費を捻出する方法だ。
この方式はアニメだけでなく、実写映画でも古くから採用されている。書籍や音楽よりも制作費が巨額になる映像コンテンツならではの方法とも言えるだろう。アニメバブルと言われた2005年前後では、アニメ製作を有望な「投資」と捉え、大手銀行や証券会社がこの方式に参加することもあったくらいだ。ところが、海外での売上げだけでなく、国内のビデオグラム販売状況もここ数年減少傾向に歯止めが掛からなくなり、筆者の周りでも「製作委員会のメンバー(出資者)がなかなか集まらない」という声を聞くようになった。「けいおん!!」などの一部作品の大ヒットが目立つ一方で、そもそも“どうやってお金を集めて作品を作るのか”に関係者は頭を悩ませているのが実情だ。その結果、2006年には年間306本あった新作は、現在では半分程度になっている。売れないからお金が集まらない、お金が集まらないから本数を作ることができないという悪循環に陥っているようにも見える。アニメの収益構造は激変
動画協会の別の資料を見てみよう。マッドハウスの代表取締役を務め、『アニメビジネスがわかる』の著者でもある増田弘道氏のワーキンググループがまとめたデータだ。こちらもざっと見て、2006年から売上げ全体の減少傾向が続いていることが分かるが、注目すべきは、「劇場」「ビデオ」「配信」の3つの売上げ推移だ。それを見ていく前に、項目の中にある「テレビ」について、少し補足する。これは簡単に言うと広告収入である。土日の朝や平日の夕方など、子供やその親が見ることを想定した作品であれば、番組に玩具・文具メーカーなどのスポンサーが付き、その広告収入を制作費に充てることがほとんどだ。放送局は広告代理店などに放送枠を売り、代理店がスポンサーを募る。少子化が進むなかでスポンサーが減少し、子供向けアニメの放送枠が減った結果、テレビ分野の売上げも減少傾向にあるが、その減衰は比較的緩やかだ。 Twitterのまとめサイト「Togetter」で注目を集めたアニメ評論家氷川竜介氏のTweetより(http://togetter.com/li/42891)。たしかにアニメファンのロイヤリティ(忠誠心)は高いのだが、それが売上げ減少の歯止めとなっていないのが課題だ 一方、深夜帯に比較的高い年齢層が見るいわゆる「深夜アニメ」の場合は視聴率も低く、「ナショナルクライアント」(全国規模でビジネスを展開する企業)がスポンサーとなることはほとんどない(ノイタミナのようなテレビ局が中心となって戦略的に取り組んでいる枠は例外)。この場合、先に述べた製作委員会が、作品を放送するための枠もテレビ局から自前で購入する。したがって、深夜アニメではアニメチャンネルに番組を販売できた場合などを除き「テレビ」の売上げはほぼ発生しない。つまり、作品の認知度を高め、パッケージソフトや関連商品を買ってもらう意欲を高めるために、放送を活用していることになる。しかし肝心の「ビデオ」の落ち込みが激しい。業界では「ビデオグラム」とも呼ぶこの分野。上記の図で分かるように、ビデオはアニメの関連売上のなかで高い比率を占めているのだが、2007年度集計の758億2300万円に対して、翌2008年度のそれは534億9500万円と30%以上も減少してしまった。この減少は幾つかの要因が重なって起こっている。ハードディスクレコーダーの普及によって、深夜アニメの録画が容易になったこと。デジタル放送によってDVD以上の画質での録画と保管が可能になったこと。仮に録り逃してもネット視聴の手段も複数用意されるようになったことなどだ。ビデオテープを経てDVD、Blu-ray Discへとフォーマットも進化してきた。ハイビジョン化の流れの中で、高画質なBDソフトの需要は高まっており、特にアニメの分野では、昨年後半あたりからBDの売上が急速に伸びている。しかし、HD制作の作品が増える中、コンテンツはSD画質のDVDのみという状況も長く続いた。HD DVDとブルーレイとの間での規格争い(2008年に決着)も、買い控えにつながっていたと考えられる。
ビデオ販売の減少=メディアシフトの現れ、だが……。ビデオグラムの販売が減少を続けている背景に、メディアの力関係の転換があることは疑う余地はないだろう。「若者のテレビ離れ」が進んでいるとか、ニコニコ動画をはじめとするネット動画サイトの盛り上がりなど、それらしい理由はいくつも転がっている。よくネット上の議論などで見かけるのは、「ではネットで有料販売すれば良いじゃないか?」という意見だ。パッケージメディアが売れないのであれば、ネットの有料配信などのマネタイズを積極的に行なえば良いはずというわけだ。しかし、事はそう単純ではない。先ほどのグラフの「配信」を見てほしい。伸びは確認できるものの、全体に占めるボリュームはまだわずかで、ビデオの販売減を補うにはまったく至っていない。アニメ番組の有料配信をほぼ網羅する「バンダイチャンネル」やヤフー傘下となった「GyaO」といったプラットフォームがすでに存在しているにも関わらずだ。実はこの部分が、メディア・シフト全般が抱える共通のジレンマといえるだろう。電子書籍の話ととてもよく似ていて、既存分野の売上げ減少に対して、期待されるネット領域での販売がいまのところそれをカバーできていない状況があるのだ。 ライブ型メディアは救世主となるか?その一方で倍近い伸びを見せたのが「劇場」販売だ。ただし注意しなければならないのは、ジブリの大型作品が公開されるとこの数字は急激に上ブレすること。実際、2008年には主題歌も大ヒットした崖の上のポニョ(興行収入155億円)が公開されている。ポニョを除くと、倍どころか昨年を下回ってしまう。この連載でも取り上げていく予定だが、テレビではなく劇場を最初の展開の場(ファーストウィンドウ)として選択するアニメ作品が増えている。すでに音楽の分野では、設定価格が高く、またコピーも不可能な「ライブ型消費」に注目が集まっているが、映像においては映画の劇場公開がそれにあたるといってもよいだろう。劇場展開の弱点としては、シネコンプレックスが増えたとはいえ上映館数には限りがあること。テレビやネットと比べ視聴機会は限定され、誰もがそこでコンテンツを展開できるとは限らないことなどが挙げられる。これはライブ型消費全般の弱点でもある。地理的・物理的・時間的な制約は、「限定感」というプレミアムにもなる一方で、機会損失にも繋がる諸刃の剣だ。「配信」の売上げを増やすにはどうすればよいのか?もしくは「劇場」のそれを一段と増やす方策は存在するのか?――こういった課題については、今後関係者へのインタビューなどでその解決の方向性を明らかにできればと考えている。繰り返しになるが、これはほかの分野のコンテンツにも適用可能なヒントになるはずだ。
アニメを巡る現状を俯瞰
ここまではデータを元にアニメビジネスの現状を見てきた。かつて「コンテンツ イズ キング」という持ち上げられ方をした国産アニメーションだが、メディアの変化による影響とは無関係ではいられない。しかし、ほかのコンテンツ分野に比べ、メディアを横断的に活用していることから、取りうる選択肢も豊富にあると言える。次回は、コンテンツとメディアを考える際に必須とも言えるふたつの概念、「バリューチェーン」と「ウィンドウウィングモデル」を取り上げつつ、今まさに変化しようとするアニメのビジネスモデルについて考察していく。
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