はじめまして、お仕事のお誘いのメール、どうもありがとうございます。 ただ、今現在私、映画監督休業宣言を出しておりまして、その理由が、経済的困窮にあるわけです。 映画監督業を10年以上頑張ってきたのですが、日本の映画監督業界の無料奉仕活動の多さにもうどうにも首が回らなくなってしまいまして。 それで非常に恐縮なのですが、シナリオの改稿をお引き受けするに当たっては、通常の仕事をするのと同等の報酬を頂けるようなら...という条件になります。 1週間くらいでできる範囲なら、10万円、ひと月くらいなら30万円くらい。 少々高額だとは思いますが、ご検討ください。 あと、スケジュールのことですが、私近々資格を受験予定です。なので動き始められるのは8月18日以降になります。 色々申し訳ありませんが、こちらでご検討ください。どうぞよろしくお願いいたします。
これは何日か前にある自主映画のベテラン監督にコンタクトを取り、来た返事をそのまま掲載した。威名を断固拒否する俺も、さすがにこのメールに関して監督名、その作品名を掲載するつもりは全くない。
まず先に別人の話になるが、先月、映画「サイタマノラッパー」の入江悠監督が自分のブログにちょっとした「休業宣言」の様な事を書き、ネット上でちょっとした話題となった。TBSラジオで宇多丸がこの事に触れたのにはちょっと驚いた。「助けてやって下さい」みたいな事を云ってた記憶がある。昨年公開された映画の中で1位だと宇多丸は以前から云っていたからだ。それ故、今回の「休業宣言」は彼にとってもショックだったのだろう。なんせ映画監督協会新人賞受賞監督が受賞後、「家賃が払えなくなったので、東京を離れて暫く実家の埼玉に戻る」と云うんだから、宇多丸だけじゃなく協会も呆気にとられてたのは容易に想像出来る。何ヶ月か前、NHKの30年前のラジオ番組「サウンドストリート」と云う番組が期間限定でネットで公開されてたので、若き日の坂本龍一がDJをやってるエピソードの中にゲストが映画監督・大島渚の出演したのがあったので、それを聴いた。
大島「坂本君、僕ら映画監督って年収いくらか知ってる?」
坂本「う〜ん、サラリーマンが800万円だから、それよりちょっと多いくらいですか?」
大島「僕ら年に400万しか貰ってないんだよね」
自重気味に笑ってたんだが、背筋に戦慄が走った。30年前のインタビューである。まず「30年前のサラリーマンの年収が800万円」と云う事実。今、都内で年収600万円以上って3%しかいないと云われてる。そして「監督協会所属の監督の年収400万円」と云うコメント。俺が最近、聞いた話では「100万」だと。実は入江監督の「休業宣言」発表の数日前に、偶然、ツイッターで彼から俺宛にコメントが来た。「日本の映画監督の年収は100万円前後」と俺が書いたからだ。
入江「監督の年収ってそんなに低くてどうやって生活してるんですか?」と質問して来た。
俺「そうですね。偽名を使ってエロビデオの監督やバイトで食いつないでます」
入江「100万円って、それってどこ調べなんですか?」
俺「君もよく知ってる日本映画監督協会、そこの所属会員の方達のコメントです」と即答した。
入江「まぁゆっくりやって行きます」
みたいな悠長な事を云ってた数日後に「休業宣言」である。これに俺は絶句してしまったが、まぁしょうがない。ウソじゃねえもんな。学校じゃ業界の実態を一切教えないから、こういう風に生徒が路頭に迷っちゃうわけよ。入江の様に。ネガティブな事教えたら、客である生徒が来なくなるもんな。俺の知ってる事実を云うと、世界中で毎年、数千人の監督がデビューしてるが、2作目以降を撮れてるヤツらはその内、数%。圧倒的にほとんどはデビュー後に消えてる。話を最初のメールの件に戻るが、有名大学卒業後、この人も十数年前から、この世界に入って来た。製作費数百万円の自主映画ばっか10年やって、ようやく2年前に有名女優を使ってレコード会社の出資で数千万円の低予算映画を監督し、「屈折十数年、ようやくメジャー一直線か?」と、この人のブログを読むと、「この業界に絶望した」だの「騙された」だの書いてる。結局、映画は単館公開され、事実上のVシネの様な扱いにしかならなかった。この人は今、来月の資格検定試験に日々精進してるらしい。これも人生かも知れんが、余りにもアンフェアな業界としか云いようがない.....。

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