世界のプレミアム映画祭と云われるSundance、Cannes、そしてTelluride以上に高品質な映画が集まると云われ、半年後のオス カーの候補作品がいち早く鑑賞出来るとも云われるToronto International Film Festivalが開催される季節。そして映画ファンにとって夏休み映画の終わりの季節でもある、この夏公開(9月上旬までに)されたハリウッド映画の 75%はリメイク、もしくは続編、或は既に原作本として出版されているものとして映画化され、公開されたモノだ。Torontoは出来るだけ上映作品をオ リジナルなものに限定している。これがオスカー候補量産の理由でもある。注目される映画は完全オリジナル作品と原作本の映画化の二つに分かれる。 Danny Boyleの監督最新作"127 Hours"、Tom Hooper監督作"The King's Speech"、Darren Aronofskyの”Black Swan”、Larysa Kondrackの"The Whistleblower"、John Cameron Mitchellの"The Rabbit Hole"、Robert Redford監督作"The Conspirator"等、いずれもオリジナル作品だ。俳優Ben Affleckの監督作"The Town"、Clint Eastwood監督最新作"Hereafter"もオリジナル作品だ。"Babel"のAlejandro Gonzalez Inarritu監督最新作"Biutiful"、Derek Cianfranceの"Blue Valentine" は1月のサンダンスから5月のカンヌでも評判が続いている。ここで紹介した作品は全てオリジナル作品だ。それに対して、この夏公開されたハリウッド映画4 本中、3本はリメイク、原作もの、或は続編映画で、オリジナルではない。更に酷い話は、そのブランド化されたハリウッド映画のほとんどは期待以下の数字に 終わっているのが痛い。今夏の興収は昨夏と比較し若干上昇している。理由は高額の3D入場料だ。しかし入場者数は過去4年で最低を記録。しかし7月の3週 間、"Despicable Me"(邦題「怪盗グルーの月泥棒 3D」)、"Inception"や"Salt" が公開された。まるで誰かが、窓を開けてくれた様だ。観客は新しい空気を吸いたいかの様にこれらの映画に殺到、興収も予想以上の数字を上げた。脚本家や映 画会社の重役、マネージャーやエージェント達に訊いてみた。「なぜハリウッドはオリジナルものを避けるのか?」と。 その結果、4つの回答にまとめられた。
A回答として「不良債権と不況だから」と云う回答。「映画会社の重役達はリスクを取りたがらない」と、ある脚本家担当エージェントは云う。「西部劇が当たれば、また別の西部劇をやる。コケるまでやり続ける」。
B回答。「何年も触ってないヒット映画への過度とも云える依存。権利保持者は映画の最初の利益を手に出来、内容にも口を出せる。彼等は良い映画の作り方さえ知らないのにだ」。
C回答。何も関係ない脚本家が突然雇われ、そして去って行くケースが多過ぎ。数人の脚本家は、改稿は続けば、当然、オリジナリティは損なわれると云うのを認めている。重役やプロデューサーを喜ばす為に同じモノを提供してしまう。
D回答。どの映画を製作するかの段階に、マーケティング担当重役の意見が幅を利かす様になって来た。彼等はどう云う映画だったら売り易いかを念頭に発言する。つまり過去に売れた作品名を連呼する。
「今夏ヒットした「怪盗グルーの月泥棒 3D」や「インセプション」のヒットでオリジナル作品が見直されればいいんだが」と製作会社Illumination社の創立者Chris Meledandri氏は云う。同社の「怪盗グルーの月泥棒 3D」は「シュレック・フォーエヴァー」「カンフーパンダ」「ハッピーフィート」「レミーのおいしいレストラン」 「マダガスカル」「アイスエイジ」をも追撃した。「映画業界全体が、オリジナル作品の可能性に戻るべきだ。観客は観た事もない新しい映画、キャラクター、 世界観、ストーリーを探している。ビジネス的見解から云うと、今日の新しいアイデアは明日のカネになるシリーズ物の原石と云っていい」。今夏公開された「怪盗グルーの月泥棒 3D」や「インセプション」の大成功は例外、偶然と見る向きもある。前者の予算は6900万㌦(約60億円)、FoxからUniversalに引き抜かれたMeledandri氏は本作をIllumination社の第1弾作品にしたかったからだ。「インセプション」も更に例外と見られている。「ダークナイト」が歴代2位の大ヒットとなり、製作・配給のWarner Brosの重役達は次の「バットマン」を監督のChris Nolanに期待したが、監督の次回作は「インセプション」の脚本を提出し、一同驚いたと云う。「ダークナイトの」ご褒美なのか知らないが、会社は監督の頭の中に10年宿っている説明不可能な映画のプロットに賭けた。製作費は1億6千万㌦(約140億円)。これが他の監督だったらその予算を会社は承認しただろうか?この映画はハリウッドの脚本家担当エージェント達に勇気を与えた事になる。「最近、スタジオとの企画会議等で、「オリジナル脚本」と躊躇なく提案する様になった」、とある業界人は云う。「今、我々はオリジナルと云う名の列車に乗ってる。エージェント達はクライアントである脚本家達にオリジナル脚本の執筆を奨励しているくらいだ」とも。「素晴らしいのは、監督がカネが欲しい余り『ダークナイト』の続編に易々と手を出さず、代わりにやったのは『インセプション』と云うオリジナル脚本を書いた事だ」と、あるエージェントは云う。「脚本家達がオリジナルに手を出さなかったのは、誰もオリジナル脚本なんて読みたがらなかったからだ。市場がなかったわけだ。脚本家達はこう云う。”玩具メーカーとタイアップ出来ない映画企画には興味ないってスタジオが云ってるのに、どうやって自分のオリジナル脚本を売るんだ?”と」。Warner BrosやFoxの様なスタジオはオリジナル脚本の重要性を再認識し始めてる。もし営業担当者がイエスと云わなかったら?もうそれは会議から叩き出すしかないのかも.....。

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