「映画のセールスエージェントは配給会社なのか?それとも不動産ブローカーなのか?」と云う記事に注目。映画監督は時として、映画ビジネスを分かってる様で分かってない人が少なからずいる。「セールスエージェントと配給会社の違いは何か?」と自問してる者もいる。不動産屋と仮定すると、セールスエージェントは、クライアントであるあなたの承認さえ貰えれば、あなたの家を転売する権利を持ってる不動産ブローカーとは違う。彼等は通常、土地を買い取り、転売する。要するに最初に地主から転売権を取得し、それを期間、金額、ロイヤリティ等を含んだ土地ごとの権利を転売する。時としてオールライツ(全権利)を売る時もあれば、一部の権利を販売する事もある。セールスエージェントは映画の権利を売るだけでなく、持ち主である映画監督、プロデューサーが不利と云われる様な取引内容を避ける為にコンサルティングする役目もある。勿論、国内だけでなく、海外市場でも同様だ。一度、エージェントと権利保持者(映画監督、プロデューサー等)契約が締結されると1本の映画につき、貸与期間が15年~20年のスパンになる。この契約内容は非常に古い基準で、カンヌ映画祭のバーでナプキンに書いて交渉していた。セールス会社は長期間に渡る契約をプロデューサーと交わし、前金をプロデューサーに支払う。最近は世界的不景気なのか、その額も年々減額されている。セールス会社は、映画の販売販売権を獲得すると、各映画祭を回り、映画を売り歩く。勿論、映画祭へ行けば行くほど「営業経費」がかかるが、売れば売るほど、その経費は払い戻せる。勿論、映画にもよるが。セールス会社と云うのは、映画の全権利を持ちたがる。10年、12年、15年、20年、25年と、一粒で何度も美味しい事になる。特にドイツ、韓国、ギリシャ、日本では旨味が増す。セールス会社The Film Collaborative(TFC)の担当者は「うちで権利を獲得する事はないです。飽くまで売る側のプロデューサーと、買う側の配給会社との直接取引です。自分の映画を売りたい会社の為に、配給会社を集めて販売会の様なイベントも開催します。勿論、ここでも我々が権利を買い取る事はありません」。この会社は言わばNPOの様な非営利団体だ。TFCは売買の経験のない映画監督やプロデューサー達のアドバイスもやる。この業界は海千山千の猛者が多く、隙あらば相手を騙すと云った輩が少なくない。それを回避する為にもこの様な団体が、「処女監督」「処女プロデューサー」を正しい道に引率する役目を持っている。
エージェントと代理販売契約する時、著作権を渡してはならない。渡していいのは「代理販売委任権」だけ。「面倒くせえから、おたくで売っていいよ」と云う権利だ。これを履き違えて、身ぐるみ持ってかれた話も十や百ではない。ほとんどのセールス会社はこう云うビジネスモデルを承認しないが、TFCのビジネスモデルはこうだ。何故なら非営利団体で金儲けが核ではないからだ。映画監督は極貧生活を余儀なくされているのに、映画を預かっているセールスエージェントがそのカネで世界中を飛び回り、映画祭でいいモノを食べるのを黙って見ているわけにはいかない。1本の映画を売って数億円稼ぎ、南スペインで隠居生活してる元セールスエージェントもいる。映画監督が前払いを貰える事はない。エージェントに渡したからには前金は絶対、いつも払わせなければならない。何故なら、かなりの高い確率で、それがエージェントから支払われる最初で最後のカネかもしれないからだ。勿論、エージェントとの最初の交渉時に有利な条件を締結させれば問題は減る筈だ。いかなるケースであれ、自分の雇ったエージェントがもの凄い契約を持って来ない限り、自主配給と云う道も忘れてはならない。自分の映画は自分でコントロール出来る様にしておきたい。技術の進歩は映画製作だけでなく、映画配給の中にも入り込んでいる。海賊達は人の作った映画に字幕を付けて、全世界に勝手に配給している。何で俺たち、映画製作者にそれが出来ないんだ?
映画を売る時は、出来るだけビジネスモデルを不動産エージェントのモノに近づける努力が必要。それくらい、映画のセールスエージェントは落とし穴が多いって事だな。ヘタすると自分のせっかく作った映画が、セールスエージェントの金蔓となり、自分のところにまでカネが流れて来ないって事にもなりかねないし、実際それで泣いてる映画監督、プロデューサーの多い事.....。

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