人口の減少は、かつてのような経済成長の再開とデフレの克服を難しくする。 日本経済は第2次世界大戦後の数十年間、新しい世代が労働力に加わるのを背景に繁栄を謳歌した。本田宗一郎や盛田昭夫といった傑出した起業家が未来を築き始めた。政治の世界では、男爵夫人だった経歴を持つ加藤シヅエが国会議員になり、男性議員が大半を占める国会で産児制限を容易にする法律を成立させた。 コンドームが広く行き渡るようになり、出生率は1947年から1957年にかけて半分に低下した。このことは、養わなければならない子供の数が減る一方、給料が増えていくことを意味した。勤続年数に応じて自動的に昇給する年功序列制度のおかげだ。 生産年齢人口が1950年の5000万人から1975年の7500万人へと増加するにつれ、貯蓄が増加し、企業はこれを元手に恐ろしいほどの急成長を成し遂げた。 これが1990年代までの日本経済の大まかなパターンであり、1990年の金融バブル崩壊後もしばらく続いた。 経済成長は1996年までピークを迎えることがなかった。さて、この構図を反対にしてみるといい。日本経済が失速し始める直前の1995年に生産年齢人口は8700万人で頭打ちとなり、それ以降急減している。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現在のトレンドが続けば、20年後にはピークに比べて2000万人減ることになる。2050年には5000万人の大台を割り込み、1世紀かけてほぼ完璧な正規曲線(左右対称の釣り鐘状のカーブ)を描くことになるという。 同様な労働人口の減少を今後経験するのは、先進国ではドイツだけだ。経済成長の源泉は主に2つあり、そのうちの1つが労働力である。労働者の数が減る中で生産の水準を維持するためには、労働者1人当たりの生産高を増やさなければならない。人口減の悪影響を緩和する方法はいくつかある。働いていない女性や高齢者、外国人の労働を奨励したり、成長率の高い市場を海外に求めたりすることがこれに当たる。だが、労働者の減少を相殺できるペースで生産性を高めることができなければ、生産は減少し、生活水準もいずれ低下する。今のところ、日本の労働人口の減少はまだ加速している。同時に、アジアの企業と競争する日本の輸出企業は人件費の圧縮を強いられている。おまけに、日本は2008年の世界金融危機の悪影響からまだ完全には立ち直っていない。ニューズレター「オリエンタル・エコノミスト」のリチャード・カッツ氏は、日本企業は過去20年にわたって労働を資本で代替してきたため、総労働時間が減少していると書いている。「1991年以降の日本の国内総生産(GDP)成長はすべて生産性の向上により達成されている...。もし日本がより高い成長率を望むなら、生産性を高めなければならない。この人口構造で移民を受け入れないなら、そうする以外に道はない」その意味では、「失われた20年」と称される1990年以降の日本経済の停滞は異常な事態ではなく、これから生じることの前触れなのかもしれない。なるべくしてなったと言うべきか、かつて日本の経済成長を支えた人口構造が、今後は日本経済に重くのしかかり始めることになろう。政策研究大学院大学の松谷明彦氏は2004年の著作『「人口減少経済」の新しい公式』で、この人口構造が日本の経済成長率を主要先進国の中で最も低いものにすると述べている。 松谷氏はまた、過去に例のないスピードで進んだ日本の生産年齢人口の減少は景気減速を悪化させており、若い労働者の減少は日本のイノベーション(技術革新)の能力にも悪影響を及ぼしているかもしれないと考えている。
東洋のアルゼンチン
日本の将来の経済成長率について悲観的な立場を取っているのは松谷氏だけではない。日本は先に、世界第2位の経済大国の座を中国に明け渡した。ゴールドマン・サックスの予測によれば、2050年までにはインドとブラジル、インドネシア、メキシコ、トルコにも追い抜かれるという。政治学者の猪口孝氏は、日本は「東洋のアルゼンチン」になりかねないと悲観している。アルゼンチンのように世界有数の裕福な国から悲しいほど衰えた国へと、ほんの数十年間で転落してしまうかもしれないというわけだ。既に日本の企業は、将来に強気になれないために投資を絞り込んでいる可能性がある。松谷氏が指摘しているように、労働力人口が増加している時には過剰投資してもこれをカバーすることができた。過剰な部分、すなわち遊休設備はいずれ吸収されるからだ。しかし、人口が減少している時には遊休設備は時間とともに増大してしまい、デフレスパイラルを引き起こす。UBS証券会社のエコノミスト、会田卓司氏によれば、日本企業はここ数年間、貯蓄率を大幅に引き上げており、現在の企業貯蓄のGDP比は10%に迫っているという。これについては、バブル期に過剰な債務を積み上げた後遺症だと見る向きもある。しかし会田氏は、人口減や円高、冴えない経済見通しなどに対する警戒感の表れかもしれないと述べている。同氏が描くシナリオには、企業があまりにも多く貯蓄をするために15年後にはネットデット(純有利子負債)がゼロになるというものもあるそうだ。本当にそうなれば、日本の将来の経済成長にとって非常にまずい事態となる。政府はこれを埋め合わせるために、借り入れをさらに増やさねばならないかもしれない。日本の企業経営者たちは口を揃え、既に消費者層の縮小による痛みを感じ始めていると言う。実際、コンビニ業界や百貨店業界では、スケールメリットを享受するための合併が相次いでいる。昨年は、キリンホールディングスとサントリーホールディングスが国内市場の落ち込みをカバーするために経営統合を模索し始めた(ただし、統合比率などで折り合いがつかず破談に終わっている)。ゼネラル・エレクトリック(GE)の日本法人、日本GEの藤森義明社長は、自分の会社がここ5年間成長していないのは高齢化の影響によるところが大きいと苛立ちながら語ってみせる。お年寄りは夜早めに床に就くから、その分だけ電力が消費されず、同社の電力関連事業に悪影響が及んでいる。お年寄りがあまり旅行をしないことも、同社の航空関連事業に打撃を与えている。さらにはお年寄りが最新の情報技術の利用に熱心でないことも、ヘルスケア事業が伸び悩む一因になっている、というのである。
デフレが味方になる時
影響はこれにとどまらない。高齢化が進めば進むほど、その社会は無意識のうちにデフレを——少なくとも、今の日本で見られるような緩やかなデフレを——奨励するようになる可能性がある。貯蓄のある人々にとって、物価水準の下落は財産が実質ベースで増えることを意味するからだ。 モルガン・スタンレーMUFG証券のチーフエコノミスト、ロバート・フェルドマン氏は先日、高齢者にはデフレを容認する傾向があるとの見解を明らかにした。また同氏によれば、高齢者は国会の議席が過大に割り当てられている地方に住んでいることが多く、その意味で選挙制度上、優遇されている。そしてそれゆえに、高齢者が経済政策に及ぼす影響力も不釣り合いに大きくなっているという。日本政府と日銀が長期にわたる物価の下落を止められずにいる理由は恐らく、この点からも説明できるだろう。日銀自身は、デフレは金融政策の問題ではなく低生産性の問題だと考えている模様で、当の日銀が最初に実行し、米連邦準備理事(FRB)が2008年の金融危機以降、米国経済に流動性を注入するために使っている量的緩和の効果にも疑問を抱いている。日銀は今年10月、経済の流動性を増やす対策をいくつか講じたが、その最大の理由は、日銀の独立性に懸念を抱いている政治家たちをなだめることにあったようにも見える。日銀は消費者物価上昇率を0〜2%にすることを目指しているが、国会はデフレとの戦いを支援する手段として、これより高い水準のインフレ目標を日銀に課すことを検討している。しかし、日本との関わりが長い英国人エコノミストのアンドリュー・スミザーズ氏は、達成不可能な目標を掲げるのは、既にある目標を掲げ続けるのと同様に非生産的なことかもしれないと話している。もし高齢化がデフレの定着に一役買ってきたのだとすれば、インフレ目標をいじくり回しても大した成果は得られないだろう。
デフレに悩む日本、インフレに悩む中国。一長一短あるんだろうが、日本のデフレは異常。20年? 経済専門家は「2011年にデフレが収束の兆しを見せる」と無邪気な事を云ってる。その心は?理由とか云えないわけよ。何故なら分からんから。不景気が続くと、てめえ達の商売にも影響が出るしな。ここら辺で一発、大判風呂式敷いとかないと、先行きマズいと判断したんだろう。年末の経済人の集まりで、元日銀の榊原と双日の吉崎の二人以外、「来年は日本が復活します」と根拠のない事をカメラに向かって云ってるんだが、俺的には「はぁ?」なんだよ。「根拠は?」とにかく無責任なヤツは霞ヶ関や永田町だけじゃないのな.....。
MTV Rocks! - Ident Series 2 from PostPanic on Vimeo.

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