Thursday, October 11, 2012

The End of the Nuke Technology

【考・原発】九州大学副学長・吉岡斉氏インタビュー ~劣った技術を実用化した罪

2011年3月11日、東日本を襲った大地震は、日本人の原発に対する思いまで変えてしまった。これまで「原発は安全だ」と言われ続けてきて、原発に対して盲目的な信用を置いてきた一般市民の多くが、それは間違いだったことに気づいたはずだ。原発とどう向き合っていけばいいのか。九州大学副学長で福島原発事故の政府事故調査委員会のメンバーである吉岡斉氏に、原発に対する考え方とこれからの方向性を聞いた。

<劣った技術を実用する愚行>

――福島の事故から1年になります。先生の原発に対するお考えをうかがいます。

吉岡 従来から私は、原発については非常に冷ややかな見方をしていましたが、ここまでの事故に発展するとは予想を超えていました。あのような劣っている技術を政府が優遇してきたのは、間違いであると思います。政府が優遇しなければ、原子力発電はここまで普及しなかったでしょう。電力会社が国策協力に応じたのだと思います。あんなガラクタ技術を国策にしたというのが、そもそもの間違いのもとです。私の従来からの主張は、国策的な推進とか優遇とかいうのはなくすべきというものでした。それをやらなくなれば、企業は当然、原発から手を引くだろうと。ただ、原発の場合は、建設費と後始末費が非常に高くてランニングコストは安いという特徴がありますから、いったん建てて安定して動いている原発を、動いているのに止めるというのは、経営者にとっては非常につらいことだと思います。その分、火力発電の焚き増しの追加費用は、結局は消費者が電気料金で払うということになりますから、回り回って国民の負担が増えることになりますし。したがって、電力会社は、きちんと動いている既存の原発の多くについては、すぐに止めようとはしないだろうと思います。安全審査のハードルを高くしたり、原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)を廃止したりするということになれば、ちゃんと動いている原発も止めるかもしれませんが―。

――優遇策をなくせば、原発は稼働させ続けられないということですか。

吉岡 それくらい優遇されているのです。政府の補助金、交付金に加え、賠償法までついていますから。その点でいけば、私は自由主義的改革から、脱原発の動きになるだろうと考えていました。これは、法律で決めることではありません。そういうシナリオを持っていましたが、今もそれは変わっていません。2011年3月11日、東日本を襲った大地震は、日本人の原発に対する思いまで変えてしまった。これまで「原発は安全だ」と言わ れ続けてきて、原発に対して盲目的な信用を置いてきた一般市民の多くが、それは間違いだったことに気づいたはずだ。原発とどう向き合っていけばいいのか。 九州大学副学長で福島原発事故の政府事故調査委員会のメンバーである吉岡斉氏に、原発に対する考え方とこれからの方向性を聞いた。 

<数千万人の難民世界恐慌の可能性まで>

――私たちのような一般市民は、「安全だ」という一方の話しか知りえませんでした。そし て、大先生や大企業の方がおっしゃるのならそうだろうと思っていましたから、問題意識すら持つことができなかったと思います。チェルノブイリを見て衝撃は 受けましたが、「日本は違うから安全だ」と言われたら、そうなのだと思ってしまいます。それが、3月11日で目が覚めたような気がしました。

吉岡 次々に爆発をしていく姿は、私の想像を超えました。私はその危険の大きさを、3月15日あたりになってようやく気づきました。「ひょっとすると、これは東日本一帯が高濃度汚染地域になって、日本から何千万人の難民が出て、首都圏の経済機能、政治機能が壊滅して日本発の世界大恐慌が起こってしまうのではないか」――と。もしここまで発展したら、ギリシアの比ではありません。GDPが50倍くらいありますか ら。これが怖かったですね。吉田昌郎所長も、まさに同じことを考えていたようでした。

――世界恐慌まで考えていらっしゃったのですか。

吉岡 その可能性もありました。1基でも爆発したら、放射能でほかの5つの原発にも人が近寄れなくなります。すると、残りの原子炉とプールは手がつけられない状態になってしまい、延々と放射能が出っ放しになってしまう可能性を考えました。炉外に出てくる放射能の量は、チェルノブイリの数倍になり得ました。何とかチェルノブイリの3分の1程度に収まったようですが、そこまでの危機が現実のものになりかけていたのです。そのことに吉田所長たち現場の方々は気づいていたようでした。全員撤退という話も、まさにその考えのもとでなされたものです。私は3月10日までは、それだけの危機を目の当たりにすることになるとは思っていませんでした。

――日本で起こる事故は、せいぜい小規模のものに留まるだろうと考えていらっしゃったのですか。

吉岡 小規模といっても、スリーマイル島の事故(国際評価尺度でレベル5の事故。炉心の半分がメルトダウン。圧力容器は間一髪、破壊されずに済んだ)くらいまでは発生する可能性があると思っていました。

――敷地外には漏れない程度、ということですね。

吉岡 スリーマイルでも、揮発性の高い希ガスは漏れました。ヨウ素も相当漏れましたが、その程度で収まりました。日本の原発の事故では、セシウムはともかく、ストロンチウム、ましてやプルトニウムなんかはほとんど漏れないと思っていました。福島の事故は、私にとっても予想以上であったということです。1号機が爆発した後、次々と爆発が続きましたが、あれは壮絶な光景でした。 

2011年3月11日、東日本を襲った大地震は、日本人の原発に対する思いまで変えてしまった。これまで「原発は安全だ」と言われ続けてきて、原発に対して盲目的な信用を置いてきた一般市民の多くが、それは間違いだったことに気づいたはずだ。原発とどう向き合っていけばいいのか。九州大学副学長で福島原発事故の政府事故調査委員会のメンバーである吉岡斉氏に、原発に対する考え方とこれからの方向性を聞いた。

<想定の甘いマニュアル>

――想像は超えたにしても、可能性の話としては、この事故も仮定されていて当然と思います。そういうシビアアクシデントに対するシミュレーションもされていたはずですし、マニュアルもあったと思います。それが、なぜ機能しなかったのでしょうか。

吉岡 なかったからです。したがって、事故は起こるべくして起きたと言えます。たしかに、全電源喪失の際の対処マニュアルはあります。私たち事故調が原発に入ったときに、見る機会を得ました。すごいマニュアルでしたよ。具体的には、"何もしない"というマニュアルなのです。

――何もしないマニュアルというのが、よくわかりません。

吉岡 原発でも全交流電源喪失は仮定しています。それは、外部電源が全部切れて、ディーゼル発電機も切れた状態を指します。「それでも直流電源は生きているはずだ」というマニュアルなのです。直流電源というのは、バッテリーです。1号機では、それが8時間使えるという設計をしているのです。2、3号機ではもう少し長い時間持つとされていました。その間、当直は何をするかというと、「分担された計器の数値を読み上げることに徹せよ」とされています。何分かごとに「異常だ」とか「異常なし」と上司に伝えるのです。それを副当直長がオウム返しに言って、それを当直長が中央制御室から本部に連絡するというものでした。これをひたすら10時間重ねているうちに、「復旧するだろう」というシナリオなのです。1時間で復旧する想定の機器が多くて、最悪でも10時間で全部復旧するだろうと予測していたのですね。でも現実には、電源が治る見込みが全然立たず、どんどんおかしなことになっていってしまいました。そして、ついに1号機が爆発してしまい、手に負えなくなりました。そういうマニュアルだったのです。

――正直に申しあげまして、非常に驚きました。多重防護の考え方などを声高に言ってきた電力会社が、そこまでしか考えていなかったのですね。驚きとともに、呆れてしまいます。
脱原発・新エネルギー 2012年5月14日 07:00 この記事をシェアする  2011年3月11日、東日本を襲った大地震は、日本人の原発に対する思いまで変えてしまった。これまで「原発は安全だ」と言われ続けてきて、原発に対して盲目的な信用を置いてきた一般市民の多くが、それは間違いだったことに気づいたはずだ。原発とどう向き合っていけばいいのか。九州大学副学長で福島原発事故の政府事故調査委員会のメンバーである吉岡斉氏に、原発に対する考え方とこれからの方向性を聞いた。

<技術は遅々として進化せず>

――事故はたしかにひどいものでした。マニュアルにも不備があったと思います。しかし、逆に考えると、わからないところがわかったとも言えるのではないでしょうか。すると、今回の反省を活かして今後運用していくのならば、より安全なシステムが構築し得るのではないでしょうか。

吉岡 マシにはなるでしょうね。防潮堤はかさ上げされますし、ディーゼル発電機を高い所に置いておくことになったりするなど、反省は活かされていきますから、マシな状態にはなると思いますよ。福島では消防車が役立ったので、それを配置するなどですね。消防車の放水ポンプの水圧が問題なのもわかりました。7気圧くらいしか対応できないのを、もっと強くするといった対応も具体的なものになります。あるいは、浜岡原発ではすでにやっていましたが、淡水を1基あたり2万トンや3万トン、貯蔵タンクに蓄えておくといった対応も重要なことがわかりました。

――その手立てを講じたとしても「マシになる」というレベルであって、根本的な技術的な問題は残り続けるということですね。

吉岡 そうです。たとえば放射性廃棄物の問題は解決のメドが立っていませんし、運用を続ける限り、廃棄物は溜まり続けますから。

――原子力というのは、どん詰まりの技術なのでしょうか。今は技術水準が低いためにリスクが高いだけで、将来、より安全なものにすることができる―そういう種類の技術なのでしょうか。不安定な原子を安定させる術であったり、漏れを完全になくす技術であったり、廃棄物を無害化できるシステムであったりというものは、実現できないのでしょうか。

吉岡 それは期待できません。原子力発電は、技術の進歩がものすごく遅いのです。ある人はマークワン(福島第一原発で使われていた沸騰水型軽水炉の格納容器)は"T型フォード"で、最新のものは"フェラーリ"だと言っていました。これは誤った認識だろうと思います。
一般的な技術なら、半世紀もすればすばらしい進化が得られます。たとえば、1960年頃につくられた日本の自動車の代表は、「パブリカ(1961年、トヨタ)」や「スバル360(1958年、富士重工業)」などです。それらの自動車と今の自動車を比べると、半世紀でずいぶんちゃんと進化していることがわかります。家電も同じです。かつての憧れの的は14インチの白黒テレビでしたが、今では大型薄型テレビです。そういった一般的な産業技術と、原子力技術とは異なります。原子炉の進化は驚くほど遅いのです。ですから、寿命を超えても運転し続けようとしているわけです。自動車で言うならば、T型フォードが現役で走っているようなものなのです。黎明期の研究者はもっと進歩が速いと思ったから、30年くらいで新型炉が生まれ、ずっと経済効率も良いものに変わっていくだろうと思っていたのですが、全然そうではありませんでした。安全性はたしかに高まっています。最新型の欧州軽水炉は、格納容器を二重にして、安全性を高めています。しかし、それでも今回の規模の事故が起こったならば、あまり意味はなかったでしょう。

2011年3月11日、東日本を襲った大地震は、日本人の原発に対する思いまで変えてしまった。これまで「原発は安全だ」と言われ続けてきて、原発に対して盲目的な信用を置いてきた一般市民の多くが、それは間違いだったことに気づいたはずだ。原発とどう向き合っていけばいいのか。九州大学副学長で福島原発事故の政府事故調査委員会のメンバーである吉岡斉氏に、原発に対する考え方とこれからの方向性を聞いた。

<危険度ABCでランク付けを>

――それだけ危険な原発を、まだ電力会社は稼働させたいとしています。今回の事故を見てもわかるように、一企業では到底手に負えないシロモノです。止めればいいといっても、お金もかかりますし、代替エネルギーも考えなければなりません。原発は現実に存在しています。そうすると、今ある原発をどうするべきと、お考えですか。

吉岡 今からしばらくの間のことに限定するならば、何年間かは止めざるを得ないと思います。その後、現実的な方法としては、「ランク付け」をするべきだと思います。環境省の下に安全庁をきちんとつくり、そこで厳しい安全審査の基準をつくり直して、1つひとつ検査をして格付けをしていくのです。ランクを「A」「B」「C」の3段階で、比較的安全な「A」、少し危険な「B」、相当危ない「C」というように分け、「Cランクは即時停止、廃炉の手続きに踏み切る」といった具合です。Cランクには、たとえば浜岡原発、もんじゅ、もしかしたら玄海原発の1号機が入るかもしれません。Bランクは"仮免許運転"のように、夏の電力消費が高い時期だけ運転させるとか、そういうかたちをとり、一方で寿命を30年なら30年ときちんと決めるべきだと思います。今は石油の価格が高いので、石油火力を旺盛に使えば、市民の生活への影響が出てしまいます。それを考えると、Bランクも夏期には使うのが適当ではないでしょうか。1バレル100ドルの時代に石油で電気をつくるというのは、"札束発電"のようなものだというのがやはりありますから。新規に原発を建設せず、寿命がきたら廃炉の手続きに入る。そして、30年くらいのうちに日本から原子炉がなくなる、というシナリオが適当であるように思います。

――ABCのランク付けをやってみるとして、吉岡先生の予測ではどういう割合になるとお考えでしょうか。

吉岡 だいたい3分の1ずつくらいになると思います。Cがやや多いかもしれませんね。福島第一と同型のマークワンが、全国に11基もありますから。マークワンはフラスコとドーナツがパイプでつながり、再循環ポンプがぶら下がっているという、美学的にはあり得ない構造をしています。原子炉メーカーのGEは後発組ですから、とにかく安くつくってウェスチングハウスを追いかけようとがんばったのでしょう。構造が複雑になりすぎました。それらは軒並みCに入りますから、Cが4割くらいになるかもしれませんね。

――日本の原発の4割を停止させ、3割を仮免許にし、残りも使用期間に制限を設けて安全のうちに使い切るということですね。大変勉強になりました。原子力の問題は、今、直面している大きな問題です。早く道筋をつけなくては、次がいつあるとも限りません。市民1人ひとりが考えなくてはいけませんね。ご多忙のなか、まことにありがとうございました。(Net IB News)

まあ、このジイさんの云う通り、日本の原発行政もお終いにせんとな。サルの火遊び.....。

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