Tuesday, November 13, 2012

Why Nuke Movies Need to be Made

■エンタメにするには原発はタブーすぎる

樋口 園監督の最新作である『希望の国』、素晴らしかったです。もちろん、今までの映画も監督の中に「やらなければならない」という必然があって撮られてきたのでしょうけど、今回の作品ほど監督が誠実に、自己と社会と向き合った作品はないと思います。

 何よりも最優先に撮らなければならない映画でした。最初は現地に入ったらいろいろ取材するつもりだったんだけど、進めていくうちに、出会った肉声や下部構造だけで十分で、むしろ脱原発のメッセージはいらないという確信に変わったんです。

樋口 僕は3.11以降、『二十五の瞳』という小説を書いたんです。僕も園監督も、それまでエクストリームの表現が多かったのに、3.11以後を反映させた世界を描いたら、実はいい人だとバレてしまった(笑)。小説では序章と終章に僕と妻が出てきて、原発が爆発して、東京にも放射能が飛んできたことを書いたんですけど、「なぜそんなことを書くんだ? 福島出身でもないのに」って散々言われて。そういうことを言ってくる人、いませんか?

 いますね。こんな小さな島国で、県境の話をしてもしょうがないのに。そういうことに固執するから、反省も分析もないまま同じことを繰り返してしまう。もしまた次に4度目の被曝をしたら、日本人は世界の笑い者だよ。

樋口 被曝国なのに、原発が54基もあるわけで。この数って、異常ですよね。それももちろんアメリカの指図があったわけですが。

 本当にこの国はおかしいよ。もはや日本人全員が“福島県民”なのに、核の問題について深く考えてみることすらしない。まずは、その事実を認識したほうがいい。

樋口 今回の映画で象徴的だったものに「杭(くい)」があります。

 映画の中で庭が避難地域とそうじゃない地域に分断された家を描きましたが、実際に福島に行ったとき、そういうふうにテープを張られて分断されている家があったんです。解除後も区域内だった庭には花が咲いていなかったので、なぜかと聞いてみたら、「花を咲かせたら、境界がわからなくなる。この事実を子供たちに伝えていくために、ここに 杭を打とうと思うんです」って。みんな“しるし”を残そうとし始めている。

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