今月3日に創刊80周年を迎えた、アメリカ映画の業界紙The Hollywood Reporterがここ10年程、経営が厳しいと云うのはこのブログでも何度か書いたが、これまで日刊紙として発行して来た同紙が、「これから週刊発行にフォーマット変更する」と、さきほどNew York Times紙のネット版が報じた。これも高校の時からの愛読紙の一つで、毎週火曜の興収ランキングは子供ながらにも、いろいろアマチュア分析してた。この10年、度重なるレイオフ、広告収入の激減、発行部数の減少、速報性を売りにする業界ブログの台頭等、いつ廃刊しても可笑しくない状況だった。新創刊号はデザインを刷新、ブログ対抗を意識している。新創刊は来月発売。6月に新編集長に就任したJanice Min女史と出版元e5 Global Media社のRichard Beckman社長が陣頭指揮を執る。内容は分析記事と独自取材記事、独占写真等を散りばめ、速報記事にも対応出来る様にウェブ・コンテントも充実させる。広告収入に完全に頼っていた業界紙は、映画スタジオからの出稿を当てにして提灯記事等も少なくなかったが、今回の新創刊では映画会社に頼らず、ファッション業界、化粧品業界、アルコール業界、家電業界からの出稿に焦点を当てている。「特定の業界にすり寄る様な事はしない。業界自身がそれを良しとしないからだ」とBeckman氏は云う。一方Min女史は元芸能週刊誌Us Weeklyの編集長等を歴任。エース級の二人を据えたが、業界紙にカネを払う気のない、ネットでしか情報をゲットするつもりのない最近の読者に新ハリウッド・リポーターを納得させるかが重要になる。「業界紙は以前の輝きを完全に失ってる」と、南カリフォルニア大学の教授で元Los Angeles Times紙の記者Lorenza Munozは云う。「経営自体が不安定で、ブランドイメージも失墜している。読者数も減り、彼等
を呼び戻す事はかなり難しい。しかし独占記事の掲載を続ける事で、読まないとマズいと読者に「危機感」を煽らせる事でブランド・イメージを回復させる事は不可能ではない」とも云う。同じく老舗の業界紙Variety紙も同じく広告収入激減に喘いでいる。映画やテレビ局は、DVDセールスの没落で製作本数を減らさずを得ない。つまり広告出稿を減らす事になる。世界最大の映画、テレビ制作会社Warner Brothersは2009年度の広告出稿量を2008年と比較して半減させたと云う。同時に以前、カネを払って入手してた情報をネット上で無料で入手するのが普通になりつつあるのも事実。インディー映画専門のサイトIndieWire.comはアート系、インディー系、低予算系映画の必須サイトになっている。Varietyに対抗し、TheWrap.comは業界人のイベントを主催したり、Deadline.comはコンスタントに老舗業界紙よりも先に新情報をネットに掲載している。4年前、業界紙の売上は5,000万㌦(約42億円)だったが、今では3000万㌦(25億円)以下に。Beckman氏の計画では同紙を多方面に拡大・拡販する事にある。同氏の目論見では創刊月で6万部、3年で4倍を見込んでいる。現在の発行部数は国際版も含め47,000部。(有料購読者数は発表していない)そして価格は現在2㌦99㌣だが、これが売店価格で5㌦99㌣に値上げされる。しかし年間購読料は249㌦と、これまでの300㌦から値下げされる
。Beckman氏は今回のリニューアルの総コストを明らかにしていないが、編集者数を5割増の70名にし、ウェブサイトの刷新に数億円かけると云う。編集長のMin女史のサラリーも安くはない。前職US Weekly誌での年俸は200万㌦(約1億7千万円)と云われる。新創刊の準備金は一体どこから出て来るのか?Beckman氏の戦略はこの業界紙をもっと富裕層、映画会社の重役等のオピニオン・リーダーに達に発信したいのだと云う。しかしライバルメディアにはイマイチの様だ。「そのビジネスモデルの何が凄いのか全く分からない」とTheWrap.comのSharon Waxman女史は云う。レイアウトやロゴを替え、髪質も気を配った。“About Town”コーナーでは、プレミア上映でのパーティの模様や「検死報告書」を意味する“Coroner’s Report”のコーナーでは「何故この映画はコケたのか?」を検証・分析する。業界紙は報道が命だ。6月15日にMin女史が就任して驚いた事は、毎日のミーティングが行われていなかったと云う事だ。「その事実を知って、何故、ダメになったか分かった」と女史。「野球の結果だけを報じてる様なモノ」と。付け加えて「編集者の士気も恐ろしく低かった。ネットで拾ったネタの話をしたり、映画スタジオや局がやってもらいたいネタの事ばかり」と振返る。業界では時間の問題だと冷ややかに見る向きもある。「云いたいヤツらには云わせておけ」とBeckman氏は強気だ.....。
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