「礼金なし」当たり前に 借り手市場で百年の習慣消える? 外資系銀行に勤務するダミアン・カムボンさん(29)は都内の賃貸物件を100室ほど見て回った後、100年以上続く日本の慣習がなくなりつつあることが分かって、不安が解消された感じがした。部屋を借りる際に家主に払う「礼金」のことだ。最大で2カ月分の賃貸料に相当する。「うれいしい驚き」
礼金は、英語に訳すと「ギフトマネー」。保証金である「敷金」と仲介手数料に加えて、借り主がさらに支払う、貸し主に対する謝礼であって返還の対象外だ。少なくとも1897年から続く慣習で、貸し主の収入源にの一つになってきた。だが、世界で2番目に物価が高いとされる東京で、礼金は賃貸市場低迷の余波をまともに受けている。日本不動産研究所によると、東京の千代田、中央、港、新宿、渋谷の都心5区の賃料は今年6月、1平方メートル当たり平均4165円。同研究所が1998年に調査を始めて以来最も安い水準という。こうした状況下のためか、物件探しをしていたカムボン氏によると、仲介業者が「礼金なし」を貸し主に打診したところ、すべての貸し主が了承したという。カムボン氏は「非常にうれしい驚きだった」と笑った。東京の不動産会社アットランドでは、礼金をなくすことで空き物件を減らすことができるようになるとし、賃料月額50万円以上の都内の高級賃貸マンションでは、礼金を取らなくなっているという。2年前は25%だった「礼金なし」の物件が、今年は64%に拡大しているという。カムボンさんの以前の貸し主は、2年間の契約を更新する際、13%家賃引き下げと、賃料1カ月分の更新料不要を申し出たという。大和ハウス・モリモト・アセット・マネジメントの漆間裕隆財務企画部長は、2008年9月の「リーマン・ショック」とその後の景気後退が賃貸物件の稼働率低下をもたらしたと指摘する。同社は都内で8116の賃貸住宅を投資対象として運用している投資会社の資産運用を受託している。その運用対象の都心5区の賃貸物件の稼働率は、2008年には94%だったが、2009年11月に85%に低下。そのまま落ち込みが続いている。ドイツ銀行東京支店の不動産アナリスト、大谷洋司氏は「結局のところ礼金というシステムは完全になくなるであろう」という。「礼金がなくなれば借りる側は移動しやすくなる。このことは不動産仲介業者にとっては良いが、収益の大半を保有不動産の家賃が占める不動産投資信託(REIT)にとっては不利」と指摘した。
1897年に最初の賃貸契約
北海道大学法学部の瀬川信久教授の著書「日本の借地」によれば、礼金の記録は1897年の千代田区の不動産契約書にさかのぼる。もともと、土地の値上がり分を貸し主に補償するなどのために始まったものという。当初は仲介業者と貸し主との間で折半されていた。日本以外でも礼金はあるのだろうか。ニューヨーク市では違法とされるが、英国では禁じられてはいないという。同国ノーウィッチのテッサ・シェッパーソン弁護士によると、礼金を請求される可能性がある代わりに借り主は、いわゆる又貸しには課金されないという。東京都の石原知事は2004年の施政方針演説の中で、礼金だけでなく更新手数料も廃止すべきであると述べている。東京都の基本方針は変わってはいないが、礼金廃止については法的拘束力がないのが現状だ。2009年に日本の地価はそれまでの13年の間で最も下落した。しかし、米経営コンサルタント会社マーサーが今年6月に発表した世界主要都市の今年の生活費番 付で東京は、西アフリカのアンゴラの首都ルアンダの次にランキング。海外駐在員にとって物価高世界第2位の都市に選ばれた。マーサーによ る世界生活費調査は世界214都市の住居費や食費、交通費、レジャー費など200項目以上の価格を調査したもの。それによれば、2LDK程度のマンション家賃の東京の平均は4436㌦(約36万円)。ロンドンは3906㌦、ニューヨークは4000㌦だった。日本の不動産市場が回復す れば、礼金は復活するとの見方もある。レジデンシャル及びオフィスREITの運用にあたる野村不動産投信株式会社の緒方敦社長によれば、現状では新規の住 宅供給が限られているが2~3年後に再び市場が回復し、需要が供給を上回る可能性がある。そうなれば貸し手市場となり礼金復活も考えられるというわけだ。緒方社長によれば、3~4月は異動が多い時期にもかかわらず、今年の礼金収入は、前年同期比の約半分にまで落ち込んだという。東京のほか名古屋や大阪で2000以上の投資物件を保有し運用しているアトラス・パートナーズ(東京千代田区)の平井幹久社長は「東京は借り手市場であり、2007年以来家賃は15%も下落している。新規入居者を確保することが先決。不動産がREITで運用されている場合はなおさら。投資家はもはや礼金を宛にしていない」と述べた。(Bloomberg)
リーマン以降、悲惨な話ばかりだが、これは数少ない「良い余波」。勿論、業者にとってはトンでもない話だが、1世紀以上続いたデタラメがここで終焉を迎えてると云う事で、借り手にとってはこんな喜ばしい事はないし、政府は即、この極悪な商い習慣を禁止すべき。同情の余地なし.....。
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