Friday, December 09, 2011

The Art of Kickback

「ピンハネ」は日本の美しい文化である

東京電力の多重請負と9割にものぼるピンハネが話題となっている。元は1人10万円で出した仕事が、6次請け7次請けと下って行くうちに、1万円程に減ってしまうという話だ。

今回は業務内容の過酷さと時事性で注目されたようだが、こういった企業の階層化は、企業規模に比例した賃金格差と並んで、昔から日本企業の特徴として広く知られている。実際、自動車やゼネコン、IT企業においても、多重階層型のつながりは珍しいものではない。なぜ、日本企業は、大手を筆頭にピラミッド化するのだろうか。

大手が終身雇用を守るためのブラックボックス

まず、最初に大手企業があったとする。大手とはいえ、彼らも需給に応じた雇用調整をしなければならない。ただ、直接雇用の場合、この調整がスムーズにいかない。たとえ有期雇用契約であったとしても、何度か更新するうちに終身雇用と見なされるリスクもある。

ところが、どこの大手企業の周辺にも、コンプライアンス精神とアニマルスピリッツに溢れる活動家や労働弁護士のセンセイ方がうようよ群れていて、隙あらば食らいつこうと虎視眈々と狙っているものだ。

というわけで、終身雇用という建前を守るため、大手は派遣や請負という形で外注することになる。

一次受けは、通常は大手と資本関係のあるグループ企業か、中堅の企業が引き取るものだが、当然ここにも肉食系の皆さんはやってくる。だから、一次請けはさらに別の会社に外注することになる。

こうして、時間と共に、コンプライアンス精神に富む企業は、下へ下へと仕事を流していくことになる。そして、ある段階で、この流れはピタリと止まる。従業員2、30人程度。プレハブの事務所一つに、携帯電話で労働者をかき集めるような零細事業者が、最後に仕事が落ち着く先だ。

ここまでは、さすがの肉食系の皆さんもやってはこないし、解雇された労働者も訴えることはまずない。訴えたところで金などないと分かっているからだ。

要するに、“〇次請け”のようなしちめんどくさい階層構造というのは、誰が見ても

「まあ、この会社ならクビになっても賃下げされてもしょうがないよね」

と納得してしまうようなスケールの会社に、仕事およびリスクを細分化するためのブラックボックスみたいなものである。そして、その手の説得力のある会社に、時に反社会的な方々が入り込んでしまうのもまた事実である。

綺麗な一面だけ取り上げるのはフェアじゃない

通常、こういった階層化は、事業スケールと社会的信用の重要さに比例して増えていく。事実上の国策事業である原発は、その代表だろう。

それにしても、不思議な装置である。大手はこのブラックボックスに仕事を通すだけで、雇用調整しなくていい終身雇用という名の魔法のような特権が享受できる。

逆に、下の方に行けばいくほど、お金は激減してリスクだけが跳ね上がるという、およそ市場原理とは真逆な現象が発生してしまう。当然、優秀な人材は低リスク高リターンな方を選ぶから、底辺には文字通りの弱者が集まることになる。

こういった歪みは、終身雇用制度を維持するための必要悪みたいなものだ。

たまに「終身雇用は日本の文化」という論者がいるが、綺麗な一面だけ取り上げて見せるのはフェアではない。同じように「ピンハネ、中抜き、弱者の徹底した排除は、世界に誇る日本の美しい文化」と宣伝されることをおススメしたい。  城繁幸(J-CAST)

ピンハネはどこの国でもある事だが、日本だとちょっと事情が違う。上記にある様に無茶苦茶複雑な構造になってる。図表にすると簡単かもしれないが、正直、海外の人間が見ると明らかに違法である。映画業界で見ると、まず契約書と云うのが存在するが、日本の場合、あっても数枚、最悪、口約束だ。以前、女の映画監督から聞いた話だが、撮影前に組合に入ったら、プロデューサーから怒られたと。彼女は不思議に思ったんだが、要するに「ギャラが上がってしまい、テメエ達の取り分が減ってしまうからだ」と彼女。プロデューサーは出資先から数億円を預かり、下請けの製作会社に流す、末端の映画監督には脚本料込みで50万円だったと云う。元金が数億円と云う事は、一次の製作会社は半分以上、抜いてる事になる。これを断たないと、日本の如何なる業界もまともにはならんだろう.....。

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